行けたんだ! カナダ!!

~三十路兄ちゃんのカナダ生活日記~

アイ ハブ ア ペン (2)

 さすがにノンキな僕でも本当にやばいと思った。

そこで、高校時代特別講師として僕の学校に来ていたイギリス人の先生が、自宅で英語を教えている事を思い出し、その先生の所へワラにもすがる思いで行った。

 先生と会うのは当時十年ぶり。

「先生、お久しぶりです。実は来月カナダに行くんですけど、とても不安で...何とかして下さい!!」

 先生からすれば突然来て訳のわからんお願いである。

 でも先生はとても快く「それじゃ、一か月間集中講義をしましょう!」と言ってくれた。優しい上品なイギリス人のお母さんといった感じの人。

 高校時代、ふざけて先生の授業を聞かず、たどたどしい日本語を友達と一緒になって笑ったり、チョロQ(懐かしい!)を教室の後ろから教壇に向かって凄い勢いで走らせぶつけたりして、先生の事を馬鹿にしていた。

 そんなガキの頃の行動をその時、とてつもなく反省し恥ずかしくなった。

 その後出国する三日前まで、近所のおばちゃん達と一緒のグループレッスンと個人レッスンを週二・三回、短期だという事で安い料金で先生はやってくれた。

 でも、グループレッスンは正直言ってあまり好きじゃなかった。生徒は十人くらいだったんだけど、若いのは英文科の大学生の女の子と僕の二人だけ、あとはホントにおばちゃん。

 レッスン始める前はペチャクチャ井戸端会議。お菓子を持って来てはみんなで食べだすし、僕はそのおばちゃんパワーにはなかなか付いて行けなかった。

 けど、ひとたびレッスンが始まるとそのおばちゃん達は、腹の立つ事に結構英語喋れるのである。かなり海外旅行行ってるみたい。

 その当時の僕は本当に全然喋れなかったので、やばいなあと思った。

 これから海外で生活するなんて、口が裂けても言えないよ~!

 しかしある日、その上品で優しくて正直な先生は言ってしまったのである。

「みなさ~ん、彼は来月一年間暮らす予定で、カナダにいくんですよ~!」 

「ヘェ~.....」

 尊敬と軽蔑と心配と色々な物が混ざった目で見られた。

「ちくしょー!今に見てろー!!」

 一か月のレッスンで付け焼刃と言えば言えるが、何もやらないよりはもちろん良かった。