アイ ハブ ア ペン (4)
友達や昔世話になった人達との送別会というか、飲み会が続いた。ほとんど毎日二日酔い。
みんなと飲んでる時は、「よーし、いくぞー、がんばるぞー!!」 という気迫があった。
しかし反面部屋で一人でいる時。怖さが増してきて、ビビッて、
「やっぱり行くの止めようかなあ~」とか、
「今キャンセルしても結構お金戻ってくるかなあ~」とかを考えてる自分もいた。
来週の今日はカナダかあと思うと、とてつもなくワクワクする自分と、とてつもなく不安におののく自分がいるのであった。
海外は二度目である。
五年前(その当時から五年前)、ガキの頃から憧れていたニューヨークに、その当時働いていたジャズクラブのツアーに連れて行ってもらった。たしか四泊五日ぐらいだったかなあ。
小学生の頃、流行っていた某局の ”アメリカ横断ウルトラクイズ” を毎年楽しみに見ていた。
当時の僕の家には、ビデオなんて代物はなかったので、ラジカセをテレビの前に置きスピーカー越しに録音していた。つまり録音している間は、茶碗のぶつかる音や親の声なども入ってしまうのだ。番組が始まると僕は家族に「シー!!」と 人差し指を立てるのであった(これがわかるのは僕と同世代か、僕より上の世代だね~、若い人には意味不明だろうなあ~)。
「ニューヨークへいきたいかー!!」このフレーズが頭に焼き付くね。
俺も絶対いつか行ってやる! 将来は住んでやる!!
それから僕はニューヨーク、アメリカ中毒にかかった。
小学生のガキのくせにニューヨークやアメリカの地図や本を読みあさり、学校で絵を書けと言われれば、自由の女神や摩天楼の絵を書く。
そのトム・ソーヤの夢、憧れの街ニューヨークに行ったのが、初めての海外旅行だった。
興奮したね~、ホント夢の様な日々だった。エンパイアステートビルに上って、ニューヨークの摩天楼をまじかに見た時は、目の中は涙で一杯になった。
先輩に「お前、泣いてるのか?」と言われ、涙声になるのを聞かれたくなく返事も出来なかった。
明日日本へ帰るという日、夜一人でホテルを抜け出そうと本気で思った。帰りたくなかった。
それ程僕にとってあの街は魅力的な場所なのだ。
今回も本当のところはアメリカに行きたかったんだけど、そう簡単に働いて暮らせないので、ワーキングホリデーがあるカナダに行く事にした。
でもまた直ぐ、ニューヨークに行けるとはその時は思わなかった。
そのニューヨーク旅行が僕にとっての一度目の海外旅行である。
そして今回が二度目の海外旅行、二度目にして目標は一年の滞在だ。
友達と飲んだ時、いろいろな事を言われた。
「その年になって何で海外で暮らさなきゃいけないの? ちゃんと、定職について働け!」
「日本が一番いいだろ!」
「やばい薬に手出したら縁切るぞ!」
「駄目だったら、三か月で帰って来い!」
「生きて帰って来いよ~!!」
最後はほとんど戦地へ行く兵士への言葉だ。
でも僕はやっぱりガキの頃の夢、海外で暮らすという単純で漠然とした夢をかなえたかった。
誰が何と言おうとこれは俺の人生だ!!
そう思っていた(でも内心はかなりビビッていたけどね~)。