アイ ハブ ア ペン (5)
海外へ行く時、荷物を何に入れるか問題になる。
特に長期滞在者は、荷物も多いのでいろいろ考えるのである。
一つの街に長い期間いるだろうとする人はやっぱりスーツケース、一都市定住タイプ農耕民族タイプである。
いろいろな街に行ったり、旅行をしようと思う人はバックパック(リュックサックのでかいの)。遊牧民族タイプ、もしくは狩猟民族タイプかな。これは実は見掛けより結構入り、背負った場合両手が空くので移動の時便利だ(ワイルドでかっこいいというのもある)。
僕は旅行もしようと思っていたので、バックパックを買う事にした(正直、ワイルドでカッコイイというのがメイン!)。
それを買ったばかりの時は嬉しくて、小学校に入学する子供がランドセルを背負って家の中を歩くのと同じ様に、僕も空のバックパックを背負って街を歩いてしまった(その当時は28歳!)。
出発の二日前、持って行く荷物を全部バックパックに詰めてみた。結構入るなあと思い、背負ってみたが......。
荷物を全部入れたバックパック、それはとてつもなく重い代物だった。家の中をちょこちょこ歩くのはいいが、広大なカナダをそれを背負ってかっ歩するのは、ちょっと無理。25キロはその時の僕の体力には重すぎたのである。
でも神様は僕を見放さなかった。なんとキャリー付きだったのだ!
「いやあ~、キャリー付きを買って良かった良かった!」
だからワイルドに歩く事は、結局無理だったけどね。
前の日は緊張しまくってて、ほとんど眠る事が出来なかった。
忘れ物が無いかバックを開けて点検したが、一年間暮らすのに何を忘れて困るというのだろう。パスポートやカード、現金はもちろん必要だけれども、このバックパックに入ってる25キロの荷物だけで、一年間暮らせる訳はない。
どうせ向こうでいろいろ買うんだろうし、忘れてもいいや!
自分でおかしくなってきた。
取りあえず行こう! 飛行機に乗ろう!
もう、泣いても笑っても出発だ!! そう開き直った。
東京行きのため空港に行くと、見送りの友人、知人、身内の人達が来てくれた。
自分でたいして人気者だとも思っていないし、結局ひっそり一人で行くんだろうなあと思っていた。それなのに......。
本当に嬉しかったね。最後全員と握手をした。
一番最後に兄貴と握手をした時、それまで目に溜まった涙が限界に達しそうになって顔を上げる事が出来なかった。
最後にまるで青春ドラマの様に、おもいっきり大きく両手で手を振り東京へ出発した。
あの時見送りに来てくれた皆さん、本当に本当にありがとう。
重い飛行機がジェットエンジンを噴射し、真っ青な空に向かって、滑走路を飛び立つ様なパワーを、あの時みんなからもらいました。
成田からトロントまでは、直行便で12時間。たった一人で国際線に乗るのはもちろん初めて、もはや結構緊張している。でも本番はこれからである。
「がんばるぞー!!」