多国籍授業(1)
次の週から直ぐ学校が始まった。
登校初日、ローラが一緒に学校まで付いて来てくれて、バスや地下鉄の乗り方、学校の場所を教えてくれた。
バスや地下鉄の乗り方は、基本的には日本とあまり変わらないんだけど、多少違う所もある。
バスを降りる時、日本ではボタンを押して「ビンポ~ン」と運転手に伝える。でもこちらでは、ボタンの代わりにバスの一番後ろから前まで伸びる長~いヒモが窓の上に付いていて、降りる時はそれを引っ張る(ちょっと原始的)。
それにバスは次停まる所をまずほとんど言わない(地下鉄も時々言わないんだよね~)。もちろん日本みたく運転席の上に電光掲示板でご丁寧に ”次✖✖です” なんていう表示もない(実際その当時はそんな感じだったんだけど、現在はバスも地下鉄も電光掲示板はあるし、地下鉄は次の駅をアナウンスする)。
朝近くのバス停から乗って、地下鉄の駅に行く時はみんな降りるのでいいんだけど、帰り地下鉄の駅から乗って、家の近くのバス停で降りる時が最初は少し焦った。暗い夜とかは、ちゃんと見ていないと乗り過ごす。何回か違うバス停で降りて歩いた事もあった。
でもまあ、いつも乗る所はいいんだけど、初めての場所でバスに乗る時は特に注意。
ドライバーの隣に陣取って、「✖✖に着いたら教えてえ~!」と一言いうべきかな。
そう言えばこっちのバスの運転手はのんびりしているというか、何というか......。
朝の通勤時はさすがに奴等もちゃんとしているけど、昼の運ちゃんは凄すぎる。
何が凄いかというと、ガムをクチャクチャ噛むのは当たり前、紙コップのコーヒー片手に運転。偶然乗ってきた同僚とはペチャクチャ。
始発のバス停で出発まで時間がある時は、客が座る席でホットドックを口いっぱいに頬張っている。でも乗って来たおばさんもそれを見て、
「あら~、お腹空いてたのね、ゆっくり食べなあ~」な~んて言っている。
でもバスの運ちゃんはまだいい。
トロントはストリートカー(路面電車)が街の至る所にはりめぐらされているんだけど、この運ちゃんがまたどうにもならない。
ストリートカーは線路の上を走っているので、ブレーキとアクセルを踏むだけでいいからなのか(ポイントとかは、どうしているのかなあ?わからない)、たまに新聞や雑誌を読みながら運転している奴もいる。携帯電話は当たり前。
ある日なんて、信号でもないのにづっと停まっていて、どうしたんだろう?と前を見ると運転手がいない!あれ~、どこ行ったんだあ~?
数分後......、コーヒー片手に帰って来た。なんと!客が乗っているというのに、運ちゃんはコーヒーショップにコーヒーを買いに行っていたのだ!!
客はいつもの事だよ、という顔で何も言わない。
最初はなんじゃそりゃ~!と思ったけど、住んでいると僕も慣れちゃって「いつもの事だよ」という顔になってしまった。一種の洗脳かなあ~。
ホントこっちの運ちゃんは、気ままというか......。
でも、人間味があるんだよね。
いつも同じ時間に乗って来る人には、「今日は元気ないねー、どうしたの?」と声をかけたり、運転席の近くに座っている人とは、運転しながら世間話したり。なんかいいんだよねえ~、おおらかなんだよねえ~。