行けたんだ! カナダ!!

~三十路兄ちゃんのカナダ生活日記~

部屋が見つからな~い!(1)

 日本から旅行会社を通して契約したのは、二か月間だけのホームステイと英語学校である。

 つまりその後は、日本の27倍もの国土を持つ広大な国、ここカナダに僕は一人ほっぽり出される訳である。

 ここからが本当の海外でのサバイバルレース!?の始まりという訳だ。

 現実問題、一番大事なのはお金である。

 僕は自慢じゃないけどお金がない。旅行会社に支払った金額とは別に、僕が持って来た全財産は日本円であと50万円にも満たない。帰りの飛行機代も残さなければならない。お金が無くなれば即、自主強制送還である。

 無謀にもこんな貯金で良く来たものである。自分でも呆れると言うか、勇気あると言うか、持ち前のなんとかなるさ精神でやってきた。

 でもそのお金の問題より、もっと今直面する問題があった。それは、来月からの住む場所だ!

 外国での初めての部屋探し、しかもこんな御粗末な英語力でみつかるかなあ~。まあ、なんとかなるか。

 トロントには日本人向けの日本語新聞がある。週一回出ている新聞で、そこには売ります買いますコーナーや求人情報、貸部屋情報などが載っている。あと日本食料品店や英語学校の掲示板などにも部屋情報がある(今ではネットでいろいろ調べる事が出来るけど、当時はこんな感じだったんだよねえ~)。

 もちろん日本と同様に、その手の雑誌や新聞の部屋貸しコーナー、不動産屋もあるにはあるが、それは広く一般的カナディアン向けかなと思いやめた(というより交渉するにあたっての英語の不安だけど)。

 でも日本語新聞を見て電話しても、ほとんど日本語が通じる事はなく、結局英語で話さなければならなかったけど......。

 

 こっちで部屋を借りる場合、大きく分けて三つのタイプがある。一つは日本と同じ様にアパートを借りるタイプ。一つは大家さんがいる一軒家なりアパートの一部屋だけを借りて、キッチンやバスは共同。そしてもう一つは広いアパートや一軒家を複数の人間で借りる事、シェアと言う。

 最初、憧れの外国で一人で、古くてもいいからアパートを借りて暮らしたいなあという夢があった。

 朝、CNNを見ながらコーヒーを飲み、シャワーを浴びて仕事に行き、夜は、バーボンのグラスを傾けながら映画を見て、けたたましいパトカーや救急車のサイレンを子守歌がわりに眠りに着く。こんなニューヨークが舞台のハードボイルド映画の様な生活に憧れていた(バカだねえ~、テレビの見すぎだよ!)。

 

 いつも行く日本食料品店の近くに、安いアパートがあるというので行ってみた。

 部屋は6畳ワンルームぐらいかなあ。古くて安いビジネスホテルといった感じ。まあ一人で住むにはいいかなと思った。家賃は一か月500ドル、日本円で四万円。

 こっちでは大体そうなんだけど家賃の中に電気代、水道代、暖房費も含まれている(ガスは少ない、ほとんど電気のレンジである)。

 日本で言えば激安である。しかし悲しいかな仕事がまだ決まっていない身には、500ドルでも高かった。他も何件かあたったが、同じ様なクラスでそれ以下というのは、無い様な感じだった。

「まあ、しょうがないなあ~」とハードボイルド映画の主人公になる夢は、諦めざるを得なかった(僕は諦めも早いのだ!)。

 その後も新聞や掲示板をむさぼり見る日々が続いた。

 でも「これいいじゃん!」と思って、電話したら一歩遅かったり、金額も安く手頃だと思い見に行くと、床がピサの斜塔!?だったりするのである。

 それに何故か女性希望というのがとにかく多い。男は部屋を汚くするからとでも言うのであろうか。

 逆男女差別だー!、訴えてやるー! とでも言いたいところではあるが、訴える金も英語力もない。

 そんなこんなで、なかなか決まらなかった。

 日本でも部屋探しは苦労したんだから、英語もたいして通じないここカナダで難しいのは、当たり前かと自分を慰めていた。

 でもホームステイを出なきゃならない日が刻一刻と近付いて来ていたので、さすがに呑気な僕でも徐々に焦ってきた。