十五階のリッチな生活(3)
~ある夜に起こった事件~
トイレ、なんか紙つまっちゃった様だ。それに水の出る所もなんかおかしい。
日本でも僕はたまにやった。
その時は時間がたてば溶けて流れ出す、というのが良くあったので、ビスケットを食べながら願った(机の上にはビスケットが沢山入った缶が置いてある。僕が、夜お腹が減った時食べられる様にローラが置いてくれた。無くなると、いつの間にか補充してある。なんて優しいんだろう!)。
三十分後恐る恐る見に行くと、まだ直っていなかった。このまま黙っている訳にもいかない。
でもこういう状況を英語で何て言えばいいのだろう......?
こまった!!
僕は日本から持って来たホームステイの本や和英辞典を調べまくり、何とか文書を作った。そして勇気?を振り絞り、リビングで楽しくテレビを見てる二人に真実を告白した。
「すいません、なんかトイレが詰まっちゃったみたいなんですけど......」
「ほう、ほう」ラリーはゆっくりとソファーから立ち上がり、玄関の方に行った。
彼はガサゴソと何かを探している様だった。暫くして帰って来た彼の手には、日本でも使う例のパコパコするやつがあった。
カナダでも同じ物があるんだあ~!と変な事に感心してしまった。
ラリーはそれを持って詰まったトイレに行き、日本でやるのと同じ様にパコパコやった。すると僕の心配をよそにトイレはドーッと勢い良く流れ、水のハンドルも問題なく動いた。
僕は「アイム ソーリー、サンキューベリーマッチ!!」を連呼した。
「心配しないで、そんな大した問題じゃないよ」とローラはニコニコしながら言ってくれた。
壊れたらどうしよう、何て英語で言えばいいんだろう、といろいろ考え心配してた緊張から解放されて、僕は急にタバコが吸いたくてしょうがなくなった。
「ちょっと、タバコ吸ってきます(タバコは十五階から一階に降り外のベンチでいつも吸う)」と言った。
二人は僕のそんな気持ちが分かったのか、顔を見合わせて、ワッハッハと大笑いになり、「ハバ グット スモーク!」と言って僕を送り出してくれた。
ローラとラリーは本当暖かくて、いい人達だ。カナダの母さんと父さんだね~。