行けたんだ! カナダ!!

~三十路兄ちゃんのカナダ生活日記~

部屋が見つからな~い!(2)

 ある日ちょっと危険な地区に安アパートがあるのを見つけた。

 最初迷ったが、ここはニューヨークでもないしカナダで銃は認められていないし、まあ大丈夫だろうと思い取りあえず見に行った。

 家賃は380ドル、安い!しかもアパート。シェアじゃない! 早速事務所に行ってみた。

 事務の黒人のおばちゃんは、今までカナダで会った人間の中で一番愛想の悪い奴だった(こいつの出身はニューヨークか?......なんて)。

「部屋を見せてくれる?」と部屋探しの基本的第一声をそのおばちゃんにぶつけた。そう言うと、普通は見せてくれるので気軽に聞いた。

 しかし彼女からは予想もしない答えが返ってきた。

「ノー!うちは見れない、でも部屋はあるよ」

「でも、なぜ見れないの?」と当たり前の質問をぶつけると、おばちゃん曰く、

「みんなのプライバシーがあるからね」と分かったんだか分からない様な答えが返ってきた。そして部屋とバス、トイレの写真を見せられた。

 そのアパートは部屋は一人ずつちゃんと分かれているんだけど、バス、トイレは共同だった。十階建てのでかい寮といった感じ。

 部屋を直接見せてくれなかったり、バス、トイレ共同というのが引っ掛かったが、380ドルは今の僕に取ってとても魅力的な金額だ。

 おばちゃんは僕に入居申込書のような物を渡して、その紙に全て記入しろと言う。でも良く分からない所が何か所もあった。

 彼女は面倒臭そうに、半分馬鹿にする様に、

「わかんないのかい?英語読めないの?」という顔で僕を見ていた。

 全文を100%理解せずサインする事が怖かったので、僕は正直に、

「分からない所があるから、家で辞書と一緒に読むよ」と言い、その紙を持って帰った。

 その日の夕食の時、そこのアパートの事をローラとラリーに話した。するとそれまで普通に会話していたローラの顔色が一変した。

「あの地区は麻薬の売人や売春婦がゴロゴロしている地区なのよ。だから家賃も安いの!絶対に止めなさい!!

 足長おじさんラリーも、フォークでサラダを刺しながら「そうだ、そうだ」とうなずいていた。

 まさかそこまで二人が怒るとは思わなかったので、僕もやっぱりあのアパートはやばいかなあと思い、

「そうだね、止めます」と言った。

 するとローラは安心して、

「あなたがもしそのアパートに住んだら、わたし夜もおちおち眠れないところだったわよ」とワッハッハと笑って言った。

 ボールドウィン夫妻はカナダの父さん母さんだ。ありがたい事だ。

 でも来月から住む所は見つけなければならず、僕の事をそんなに考えてくれるのなら、もしかして!?と淡い希望を抱き、ローラに恐る恐る聞いてみた。

「もし、出来る事なら......、来月も部屋を借りる事は出来ませんか......?出来れば食事はいらないので宿泊費だけで......」

ローラはニコニコしながら言った。

「ごめんねえ~、それは出来ないのよ、来月から入る人もう決まっちゃったのよ」

「う~む......」

 やっぱりそれとこれとは違う話しであった。残念!でももう人が決まってたなんて、ちゃっかりしてるなあ~。

 

 いろいろ結局苦労した末、ホームステイの契約切れ5日前というギリギリのところで、やっと次の住む場所が決まった。

 香港系カナディアンの若夫婦の家だ。家賃は320ドル。

 二階の一部屋に日本人の女の子が住んでおり、その隣の部屋で彼等は寝ているらしい。僕が借りる部屋はベースメント(地下)。地下と言っても半地下なので、小さいけど上に窓は付いている。

 洗濯は近くのコインランドリーだけど部屋は綺麗だし、一階にあるキッチン、冷蔵庫は使えるしエアコンもあるし、ベースメントだけど明るい部屋でまあ安いと思う。

 

取りあえず良かった良かった。これでホームレスに成らずにすんだよ!