行けたんだ! カナダ!!

~三十路兄ちゃんのカナダ生活日記~

バーボンは難しい(1)

 まだ日本にいる時、

「お前カナダに行ったらタバコ吸えないぞー!」

「思い切って辞めちゃえ!」と友達に言われた。

 外国はタバコに対して厳しい、吸う場所がない、などの情報を聞いていた。

 僕はタバコを吸う、結構吸う(その当時......今はスッパリ辞めてます!!)。実際のところどうなっているんだろうと、少々不安を持ちながら、12時間の地獄の様な禁煙飛行機に乗ってカナダにやって来た。

 でも実際は思っていたよりそうでもないかな、というのが感想だった。

 たしかにタバコを吸わない人は日本よりは断然多い。ホームステイ先のボールドウィン夫妻も吸わなかったので部屋の中では吸えず、僕はタバコを吸いたくなると、十五階からわざわざ一階まで降りて外で吸っていた。お陰で本数は減り、皮肉にもその時体調は良かったような気がする(やっぱりタバコは体に良くないんだよねえ~)。

 公共の場所、駅、コンサートホール、役所などは全面禁煙。日本の様に建物の中に灰皿がある所はまず無い。

 大きなスタジアムでは喫煙ブースを作って、愛煙家が街灯に集まる蛾のごとくそこで吸っている(僕も蛾になった)。

 でも一歩外に出ると問題なく吸える。

 それに道端に結構灰皿が置いてある。

 レストランもタバコを吸える席は少ないんだけど、ある事はある。バーなどはカウンター席はたいがい吸える(その当時はそんな感じだったんだけど、今ではレストランやバーも全面禁煙!!)。

 一番違う所は、タバコの値段が高いという事だ。

 二十本入り一箱3.5ドル~4.5ドルもする(その当時も高かったけど、今ではもっと上がり、日本円で1000円超えくらいだ)。

 

 街を歩いていると良く声を掛けられる。タバコを一本くれ!と言うのである。

 日本では自動販売機でタバコを買う事が出来るけど、カナダやアメリカでは自動販売機という物自体が限られた所にしかない(あるとしてもジュースくらい)。

 カナダ、アメリカの街角に自動販売機がもし設置されたら、次の日に直ぐ荒くれ物によって壊されているだろう。彼等にとってその自動販売機は、道端に置き忘れられた金庫と同じなのだから。

 公衆電話さえも無残に壊されている物もある。

 更にタバコを売る店側もかなり厳しい。ちょっとでも未成年かなと思うと、ID(身分証明書)を見せろとくる。

 特にアジア人は若く見えるので、30にもなる僕でもたまに言われた。最初のうちは、こっちも英語でビビッているので、しょうがないなあ~と思っていたけど、だんだんと頭にくる。

 ある時免許証を見せて、

「30だよ! ところでお前はいくつだ?」と言ったら、25だった(やんなっちゃうねえ~)。

 それだけ厳しいので、未成年は歩いている人間からタバコを恵んでもらおうとする訳だ。まあ、高いというのもあるんだけどね。

 最初は何て言っていいか分からないし、面倒くさいし、ちょっと怖いので、つい渡していた。火まで着けちゃったりして(情けねえ~!)。

 でも友達にいい言葉を教えてもらって、その後は使っていた。

" Sorry, this is the last one"(吸っているタバコを指さして)

 これを言うとほとんど、「じゃあいいや、バイバイ!」という事になる。それ以上しつこくは言ってこない。お互い、ま~るく治まる良い嘘だ。

 最初の頃なんて一日中、街を歩いていたら、五本位なくなる日もあった。こっちだって貧乏なのに、なんなんだよ~!! 

 でも、たまに未成年ではなく、普通のスーツを着たおじさんにも言われる事がある。たぶん禁煙大国だから、あまり吸わない様にタバコを持って歩かないんだろう。けど我慢出来なくなり、一本ちょ~だい!という事なのだろうか?そういう人にはあげてた。お互い様だからねえ~。

 

 因みにカナダではカナダのタバコを吸う(当たり前か?)。

 なぜ、そういう事を言うのかというと、ここカナダは国境挟んでアメリカとべったりくっついているのに、なぜかアメリカのタバコがなかなか売っていない。

 相当大きなタバコ専門店でも数種類しか置いていない。ヨーロッパのタバコの方が多いくらいだ。

 大国アメリカの隣にある国カナダとしての意地なのか?カナダ経済のために国産を買おう!という事なのか?

 まあ、タバコだけじゃなく酒もそうなんだけど、カナダ人のアメリカ対抗意識は強いのである。

 あ、そう言えばタバコに関してまだあった。種類が多いんだよねえ~。

 銘柄の種類だけじゃなく、同じタバコでも二十本入り二十五本入り、短いの長いの......。

 その組み合わせでいろいろある。だから僕がいつも吸っているタバコを店で買おうとすると、

「キャナイ ハブ ア デュモリア エクストラ ライト スモール キング サイズ プリーズ?」(デュモリア エクストラ ライト...タバコの名前、スモール...二十本入りの小さい箱、キングサイズ...普通の長いタバコ)と正確に言わなければ、いろいろなのが出て来てしまう。

 地下鉄駅で、もう直ぐ電車が来るという時でも、キヨスクでこの長ったらしい文章を、早口言葉の様に店員に急いでぶつける。

 僕がカナダに住んでて一番多く使った文章は、これではないかと思う。最初は何回も噛んだり、発音が通じなかったりしたが、何回も言い続けるとバッチリになる。やっぱり継続は力なりだ!?